この写本は、平安時代後期から鎌倉時代(特に後鳥羽院の時代)にかけての宮中における女房の官職(官仕)と名前に関する故実を記した資料である。内侍、上臈、采女、女嬬といった官職の種類、それぞれの位階との関係、摂関家や大臣家、国司など出身階層による序列が詳細に述べられている。また、女房の名前の付け方についても詳しく、官職名(大納言局、中将局など)、地名・邸宅名(一条局、大宮局など)、国名(伊予局、播磨局など)が用いられる慣習や、その中での上下関係、特別な名前(北の政所、御台など)について具体例を挙げて説明している。 複数の奥書(永徳二年、万治二年、天和三年、明和九年、享禄二年、永正十八年、文化元年など)が付されており、伊勢家や持明院基時といった所蔵者・関係者の名が見えることから、この資料が中世から近世にかけて貴重な故実書として繰り返し写され、伝承されてきたことがわかる。当時の宮廷社会における女性たちの役割や慣習、文化を知る上で歴史的に価値の高い資料である。